時間がかかって大変そう、というイメージで語られることの多い透析。腎不全の患者さんにとってはまさに生命線となる治療法ですが、実際にはどのようなプロセスで行われているのでしょうか。透析の種類とそれぞれの仕組み、社会的役割について具体的にまとめましたのでぜひとも参考になさってください
血液透析の仕組み
血液透析は、透析でもオーソドックスなパターンです。基本的な仕組みは意外とシンプルで、老廃物の濃度が高まった古い血液をいったん体外に出し、専用のろ過装置を通して不純物を取り除き、ふたたび体内へ戻します。
この「血液の老廃物を取り除く」というプロセスこそが腎臓のおもな役割なのですが、腎臓の機能が極度に低下すると濾過槽地としての役割を果たせなくなってしまいますので、透析というかたちで人為的に血液を交換する必要があるのです。
血液透析では血を送り出す側と体内に戻す側でふたつの管を通す必要があり、なおかつ回数も原則週3回なので患者さんにとっては相当な負担となります。
腹膜透析
機能の低下した腎臓にかわり、腹膜を利用して血液を濾過するのが腹膜透析です。
腹膜にも腎臓と同様、毛細血管が網の目のようにはりめぐらされているため濾過装置として代用することができるのです。腹膜透析では、いわゆる浸透圧現象というものを利用します。
浸透圧とは、「液体の水分は濃度の薄いほうへと移動する」というもので、ナメクジが塩をかけられて縮んでしまうのも浸透圧によって体内の水分が塩分のほうに移動してしまうからです。
腹膜透析では専用の液体を腹膜に一定時間浸透させ、血管内の老廃物が浸透圧によって透析液のほうにしみ出すのを待ちます。透析液交換のタイミングを人為的にコントロールするのをCAPD、専用の機械によって自動的に液体の交換を行う方式をAPDと言います。
腹膜自体の劣化が激しいため、腹膜透析を行うのは5年程度が限界であり、それ以降は血液透析に切り替えるのが一般的であると言われています。
腎不全の種類と初期症状とは
腎臓の機能が低下したからといって、ただちに透析につながるわけではありません。
腎機能が落ち込んでくると、まず、見た目としては血色が多少悪くなる、疲れやすくなる、などの変化が現れはじめ、さらに進行した段階で精密検査を行うと尿中のクレアチニン濃度の上昇が検知される場合があります。
ここまで進行するとかなり腎機能が低下しているということですので、主治医からは透析が選択肢として勧められることになります。
腎不全を予防するためにはまず、普段の食生活のなかで塩分をひかえることが大切で、塩分濃度の高いスポーツドリンクを極力飲まないようにすることも腎臓を長く健康に保つうえでは重要なことだとされています。
透析とQOL
つい先日、とある病院で透析を治療中に拒絶する、というケースが実際に起こり、ニュースでも大々的に取り上げられました。
確かに、透析は最低でも週2回は定期的に行う必要があり、なおかつその都度太い針を腕に刺すことになるため、患者さんにとっては計り知れない負担となることでしょう。
しかし、現代医学において腎不全を克服するには腎不全が最善の手段であり、QOLを保つための最良の方法でもあります。今後、透析のプロセスがさらに改良されれば、透析の辛いというイメージも払拭されることでしょう。
後悔のない選択が大切
透析には血液透析と腹膜透析のふたつの種類があり、どちらの種類を選択するかは主治医の判断によって決められます。
どちらも長い時間を必要とし、なおかつ基本的には生涯にわたってやめることができないプロセスではありますが、だからこそ今後の日本でも透析の種類が増えることで患者さんにとっての負担が軽減される未来がおとずれると予測されています。